日本人は英語が苦手だとよく言われます。確かに、中学、高校と6年間勉強しているにもかかわらず、きちんと身についている人が少ないのが現状です。日本は、科学技術をはじめ様々な分野で世界の多くの国々と比べてすばらしい成果を上げているにもかかわらず、英語だけは後れを取っているといっても過言ではありません。一体なぜなのでしょうか。それは、そもそも英語の勉強法が間違っているからです。では、間違った勉強法とはどのような勉強法でしょうか。

英文を読むとき、皆さんはどのように読解していますか。多くの人は、最初に英文中の単語の意味を確かめます。もちろん、意味の分からない単語が散りばめられていると訳せません。英単語の学習は不可欠です。では、英単語学習がある程度進んでいて、分からない単語があまりなければどうでしょうか。一般的には、各単語を日本語にしたものに「てにをは」をつけながら、日本語として意味をなすよう順番を入れ替えて訳の文を作っていきます。これがうまくいかないと、多くの人が思考停止してしまうようです。

実はこれ、英文を読解しているのではなく、「英文に出てくる英単語を日本語単語に訳し、その日本語単語を使って日本語の作文をしている」だけなのです。日本語に自信のある人ならこの方法でもある程度うまくいきます。実際、何度かうまくいって味を占め、英語の勉強が完全に英単語暗記と「日本語作文」の練習だけになっている生徒さんも見受けられます。そのような生徒さんの大半はしかし、勉強量の割に英語の成績が上がらず、そこそこできる状態のまま頭打ちになっていることでしょう。

また、このやり方の場合、英文の内容が自分のよく知っている事柄なら訳せるのですが、知らない内容だと、全くお手上げになることさえあります。実際、英文によってすらすら読めたりわけが分からなかったりするという生徒さんたちの声は大きいです。様々な分野の知識を持っているほうが有利なので、そういった知識の欠如が原因で英語が苦手になっている生徒さんもしばしば見かけます。

ここまで書いてきたことをまとめると、英文読解のためには、英単語の知識、日本語の作文能力、多彩な知識の3点が重要ということになります。本当にそうでしょうか

今あげた3点のうち、純粋に英語の勉強といえるのは英単語だけです。ならば、入学試験の英語は単語を除いては英語以外の知識・能力を測る問題なのかというと、そんなはずはありません。英語の試験なのだから、当然、英語に関する英単語以外の様々な事項を問うているはずです。中でも最も重要なのが英文法です。実際、英文法の正確な知識とその運用能力を試す問題は多々あります。英文和訳の問題は、英文法上重要だが日本語で考えると誤解しやすい事項が含まれているのが普通です。それを知っていると知らないとでは、おのずと答案の作り方が違ってきます。また、難しい英文読解の問題でも、難しい理由はたいてい単語の難易度が高いか内容が受験生にとってなじみがないかのどちらかなのですが、英文が何を言っているのかわからなくても、文法を考えれば設問は解けるようになっていることさえあります。出題者の側でも、「日本語作文」を通して解くのではなく、英文法の正確な知識とその運用を通して解いてほしいからこそ、そのような問題を出しているのです。英語の学習においては英文法を軽視する傾向にありますが、読解問題を解くときですら、英文法は必要不可欠なのです。

日本語と英語はそもそも文構造が全く違います。「日本語作文」で英文の大雑把な内容は理解できても、英文法を知らなければ、そしてそれを正確に使えなければ、英語の文章そのものを正しく理解することはできません。「日本語作文」では、英文の中に散りばめられた重要なエッセンスがどんどんそぎ落とされてしまいます。ならば、英語の出題者が英文法を問いたくなるのは自然の理でしょう。それどころか、「日本語作文」だと2通り以上の異なった内容の日本語訳ができてしまうことがありますが、英文法を正しく当てはめれば、論理的に正しい一通りの訳が作れます。そして、実は、この、論理的思考力こそが、入試で一番問われているのです。

正確な英文法の知識を身につけ、それを論理的に当てはめて英文を読むことにより、英文読解の能力と論理的思考力の双方を鍛え上げる。そうすれば入試の英語はおろか、入学後についても、英語もその他の分野も飛躍的に能力が高くなります。それこそが、入試英語の真の狙いなのですから。

代表プロフィール

甲田 雅史 (コウダ マサシ)

 京都生まれの京都育ち。私立ヴィアトール学園洛星中学・高等学校を卒業し、東京大学教養学部文科三類に入学。3年次からは文学部イタリア語イタリア文学科に進学。

このころから家庭教師のアルバイトを始め、小中学生の全教科や高校生の英語を中心に幅広い年代、科目を指導。大学卒業後は少人数制の塾・予備校や個別指導の講師と家庭教師を兼ねてさらに指導の幅を広げ、生徒には開成の学年一位もいれば、公立中学で学年最下位の生徒さんを英語で定期試験90点台に導いたことも。

集団授業では、以前は中高生の英語と小中学生の社会、国語を担当していたが、近年は大学受験の英語がメインとなり、高卒生の指導歴も長い。東大をはじめ、東工大や一橋大、東京医科歯科大、国公立医学部のほか、早慶上理、GMARCH等を目指す生徒を教えている。

動画:PROGRESS IN ENGLISH 21 完全攻略

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